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【人と比べない生き方】新垣勉の生涯に学ぶ「人生を劇的に好転させる方法」

沖縄県出身の全盲のオペラ歌手・新垣勉さんの人生には、自分とかぶる点がいくつかあるので(彼ほど壮絶ではありませんが)、その素晴らしい歌声を聴きながら、色々と感情移入し、とても胸を打たれました。一部、自分自身の経験とも比較しながら、あまりにもドラマチックで波乱万丈な勉さん(以下、勉)の生涯を紹介します。

そして、名曲「さとうきび畑」の歌の背景にある、沖縄の歴史(沖縄の明るさと悲しさ)についても少し触れたいと思います。


さとうきび畑デラックスエディション

新垣勉の生涯

勉は、メキシコ系アメリカ人(ラテン系の軍人)の父と日本人の母の間で生まれました。生後まもなくして、助産婦の間違いで劇薬を点眼され失明してしまいます。その後、一歳で両親が離婚し、父はアメリカへ帰国。母は再婚し、目の見えない息子(勉)を置いて、出て行ってしまいました。以後は祖母に育てられますが、中学二年の頃に、唯一の支えである祖母が他界。こうして勉は天涯孤独になってしまいました。

(失明、両親の離婚、離別、祖母の死、天涯孤独と不幸が重なり)両親に対する憎しみと恨み、そして、自分自身に対する劣等感とコンプレックスでいっぱいでした。高校生の頃には、(悪いくじばかりを引いてしまった)わが身の不運を嘆き、悲しみ、絶望の中で、彼は自殺をしようとまでしました。井戸に身を投げようとしたのです。しかし、まさにこの時、天からの救いの光が差し込んだのです。まるで聖書にみる奇跡のように。

聖母マリアが(イエス・キリストにお願いをして)起こしたと伝えられる数々の奇跡のように。

こんなことって、本当にあるのでしょうか。不思議ですね。

(自殺をしようとした直前に?)ラジオからかすかに讃美歌の音が聞こえてきたのです。その美しい音に勉は心を打たれます。

まさに地獄に差し出された蜘蛛の糸。その音に誘われるように、勉は教会へ行きます。

ここで、人生を一変するような出逢いがあり、それをきっかけに勉は生きる勇気、希望を見つけ、新たな人生をスタートさせるのでした。

人生における二人の恩人との出会い−人生の転機

勉の人生を変えた一人目の恩人「牧師」

(祖母を亡くしてから)勉の人生に影響を与えた一人目は牧師です。

教会で、初めて自分の生涯を話し、自分の悲しみや辛かった日々を理解し、自分のために涙を流してくれた人。

(祖母以外で)初めて自分のことを(一人の人間として)認め、愛情をかけ、家族の一員として迎え入れてくれた人です。

この出逢いをきっかけに、勉は生きる希望、勇気を取り戻し、次第に心がいやされ、両親に対する憎しみも徐々に消えていったのです。

ここで勉は、

「憎しみからは何も生まれない」

ということを痛感したと言います。

「自分が変わると周りが変わります。周りを変えようとしても何も変わりません」
(新垣勉)

私の人生を変えた一人目の恩師

私自身、(冒頭に書いたように、ここまで壮絶ではありませんが)同じような経験があるので、この気持ちはよくわかります。

勉の「絶望の人生」は、私の場合、いじめに悩み苦しんでいた小学校時代にあたります。

そして、勉の人生に影響を与えた一人目、牧師との出逢いは、私の場合、学生時代の恩師(剣道部顧問)との出逢いにあたります。

この出会いをきっかけに、私の人生は大きく変わったからです。

それまでは、人と比べて自分はなんて不幸なんだろう、自分の人生なんて、なんの意味も価値もないと悲観ばかりしていた(憎しみや復讐心でいっぱいだった)のですが、恩師と出逢い私は変わりました。

自分に自信を持てたからです。

といっても、人と比べて持った自信ではなく、自分らしさを見つけ、自分にも誇れるもの(剣道)があると気づいたこと

そして、家族以外で自分を理解してくれる人がいるという安心感でしょうか。とにかく、初めてでした。

自分をはじめて認めてくれた人。それが、私の場合、恩師でした。これは私にとって、とても大きなことでした。

それからは、もっと認めてもらいたくて、剣道に没頭したことを覚えています。

毎日の稽古の後(必ずしてくださった)恩師の話を、心が洗われるような気持ちで真剣に聞いていました。

そして、いつのまにか、復讐心や憎しみも消えていたのでした。勉と同じように。

勉の人生を変えた二人目の恩人「ボイストレーナー」

勉の人生に影響を与えた二人目はイタリア人のボイストレーナー(神戸に在住のバランドーニ先生)でした。世界的に色々な歌手を育ててきた先生で、勉の声をほめてくれた人です。

「この声は神と、君の父からプレゼントされた贈り物(楽器)だ。日本人離れした声だ。ラテン的な匂いのする、まるでオペラのようだ!」

「君は、素晴らしい声を持つ、世界でたった一人の存在だ。」

と、大絶賛してくれたそうです。これは勉にとってものすごくうれしかったと思います。

私の人生を変えた二人目の恩師

くどいようですが、私自身、同じような経験があるので、勉の気持ちがよく分かります。

勉にとって、二番目の恩人にあたるバランドーニ先生の存在は、私の場合、人生における二番目の恩師である、大学の先生にあたります。

この(論文の指導をしていただいた)先生は、初めて私の文章、とくに分析力をほめてくださった人です。

貶すのも褒めるのも上手な方だったので、この先生に貶されることほど悔しくて、褒められることほど嬉しいものはありませんでした。

一度、ものすごく貶されたことがあり、それが悔しくて、(どうしても認めてもらいたくて)猛勉強をした時期がありました。

その結果、今度は一転して、大袈裟にも大勢の前で褒めてくださり、それがものすごく嬉しかったことを覚えています。

それ以後、調子に乗って、もっと認めてもらいたくて、まさに全身全霊、寝る間も惜しんで(一時期病気になるまで)毎日研究に没頭したことを覚えています。

恩師の凄さは、こういう状態を、私に(長期に渡って)続けさせたことです。

「豚もおだてりゃ木にのぼる」というやつでしょうか。

私のような学生の扱いが本当にうまい方だなと改めて思います。

きっと、勉も私と同じような、そんな気持ちで、自分のことを認めてくれた人の存在が、大きな心の支えとなり、自分の技術をより磨くべく努力をしたのだと思います。

こうして、勉は、オンリーワンの人生を歩むべく、しっかりと芯をもって、まっすぐに生きていく決心をしたのでした。

「ナンバーワンではなく、オンリーワンになろうとする。」

「(人と比べて)単に一番になるのではなく、ほかに例のない、世界でたった一人の人間になろうとすること」。

これが勉のモットーです。ちなみに、SMAPの有名な歌「世界で一つだけの花」の原点も勉のこの言葉にあるそうです。

人との出逢いが人生を変えることもある

勉本人が言うように

「いい出会いをどれだけもっているか。本当に自分の人生が影響を与えられるだけの出会いをどれだけ持っているか。それが大きなこと。」

だと思います。

彼は、牧師との出会いで、対話で、はじめて自らの生涯を人に話し、理解されました。

そして、それまでは暗く、閉ざされていた悲しみだけの世界から、生きる希望と自分自身のアイデンティティ(歌の才能)を見つけ、自信を持ち、立ち直ることができたのです。

ここからわかるのは、第一に、人との出会いは、時に(人の)人生を大きく変えることがあるということです。

そして第二に、その人との出会いをきっかけに、自分らしさ(アイデンティティ)を見つけることができた場合、

その出会いは、その人が生きる希望を持ち、人間として大きく飛躍するきっかけともなり得る、貴重な出会いでもあるということす。

勉は、目は見えないけれど、歌(ラテン的なにおいのする素晴らしい声)という(神様と父親からの)贈り物を授かり、歌手を目指すようになる。そして、それが、生きる力へとなっていくのでした。


だから、あなたも生きぬいて

余談ですが、同じように、絶望の人生から、ある「人」との出逢いをきっかけに、生きる希望を見出し、立ち直ることができた人は他にもいました。
いじめにより割腹自殺を図り、極道の道にまで足を踏み入れた絶望の人生を乗り越え、弁護士にまでなられた大平光代さん(元弁護士、大阪市助役)。


だから、あなたも生きぬいて【講談社英語文庫】

彼女の著書「だからあなたも生き抜いて」は、ミリオンセラーになり、英訳もされました。

そして、勉と同じように、盲目のピアニスト・歌手である北田康広さんなどが思い浮かびます。
こうしたことから、人との出逢いが人生に与える影響力の大きさを実感します。

人が根本から変わる背景にあるものとはー「出会い」「愛情」「感謝」「尊敬」

では、どうして勉は牧師になろうと思ったのでしょうか。歌がうまいから歌手になりたいと思うのはよくわかります。

でもなぜ、牧師なのか。本当の理由はわかりませんが、(最初の恩人である)牧師から、なんらかの影響を受けたことは間違いないと思います。

自分自身の経験から推測すると、その背景にあるのは、人生を変えるほどの大きな(良い)「出会い」、「愛情」、「感謝」、そして、「尊敬」の四つだと考えます。

愛情をかけてくれたことに対して、深く感謝する。そして、それがいつのまにか、尊敬の気持ちに変わっていく。

さらに、それらが心の中で、だんだん大きくなっていって、「この人と同じ道を歩みたい」と思うようになるのではないでしょうか。

少なくとも、私が教師や学者を目指そうと思ったきっかけもまさにここにありました。

恩師と出会い、教育的愛情をかけていただき、感謝をし、それが、いつの間にか、恩師への深い尊敬の念へと変わり、自分も恩師と同じ道を歩みたいと思ったのでした。

また、上述した二人の恩師との出会いをきっかけに、自分のアイデンティティ、誇れるものを見つけ、自信を持てたという意味では、勉の人生と似たものを感じてしまいます。

「さとうきび畑」に見る沖縄の明るさと悲しさ

「さとうきび畑」を聞くと、勉の声から、”沖縄の明るさ悲しさ”を感じることができると言われます。沖縄の明るさは少し考えればすぐにわかります。

人(陽気さ、歌や踊りなど)や気候(灼熱の太陽など)、大自然(青い空、碧い海、白い雲、白い砂、そして、さとうきび畑など)の明るさです。

では、沖縄の悲しさとはなんでしょうか。
決して忘れてはいけない、戦争、沖縄戦(第二次世界大戦・太平洋戦争)です。
東京大空襲(1945,3)、広島や長崎の原子爆弾投下(1945,8)などはあまりにも有名ですが、沖縄戦(1945,3)は日本国内での最大規模の「地上戦」として知られています(アメリカ軍が実際に地上に降りてきて戦った戦争)。
この戦争には、色々な背景や問題がありますが、やはり私はどうしても、(高校の歴史教科書問題でももめていましたが)「集団自決(=集団死)」の問題に関心を持ってしまいます。
沖縄戦における集団自決としては、「読谷村のチビチリガマ」の事例が有名です。
当時は、避難場所(といっても、決して安全とは言えない)ガマ=洞窟で、無数の人々が殺しあい、親が子を、子が親を殺すという最悪の事態があったといいます。
そして、その背景には、「愛国心」や「名誉」(敵の捕虜になったり、敵の手で殺されるよりは、自らの手で死に、自分たちの国の名誉を守ろうというもの)などといった(天皇のため、お国のために死ぬ!という)ある意味で、(国の)「名誉」とされるものだけではなく、日本軍による強制もあったとされます(ただし、これには否定的な見方もあります)。

中でもその(戦争における飢えやマラリアなどはもちろん集団自決の)犠牲になったのは、民間人(とくに老幼婦女子)でした。男は攻撃し前進する(ある者は戦死し、ある者は生き残る)一方で、女子ども(老人)はただただ無防備に殺されるだけ。
しかも、犠牲者は、戦闘に関わった軍人よりも民間人のほうが多かったとさえ言われています。これが戦争におけるもっとも悲しいところですね。

ちなみに「さとうきび畑」の主人公も、そんな、なんの罪もない(「鉄の雨」で父を失った)一人の少女でした。いまだに沖縄(読谷村)のさとうきび畑の下には、多くの戦死者・犠牲者(集団自決者など)が眠っているといいます。

こうした沖縄の悲しみ、暗さを、私たちは新垣勉さんの歌を通して感じることができます。

私は、この歌の背景を知り、この歌を聞くことで、決して(その悲しみを)忘れてはならないのだと強く思いました。

 

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