© SELMA All rights reserved.

20142/6

映画「ボーイズ・ドント・クライ」【衝撃の実話を基にした作品】

ブランドン・ティーナ(ティーナ・ブランドン)という人をご存じですか?映画「ボーイズ・ドント・クライ」の主人公であり、衝撃的な生涯を送った実在の人物です。


ボーイズ・ドント・クライ (字幕版)

実話、つまり、1993年にアメリカで起こった有名な殺人事件=ブランドン・ティーナ殺人事件を基にしているだけに、あまりにも衝撃的でショックで、見終わった後にしばらく呆然としてしまいました。

ある意味で、こんなに泣いた映画は他にないかもしれません。

「1993年のクリスマスの夜、ネブラスカの街でブランドン・ティーナという若者がレイプされ、後日殺された。
ブランドンは地元の女性達の間で人気が高くハンサムな男の子として知られていたが、地元の新聞にトランス・ジェンダーであることが暴露され、それを知った男友達らの手で殺されたのだった。」
(「ブランドン・ティーナ殺人事件」に関する記事より)

ちなみに殺害現場となったフォールズ・シティの農家の床には未だにブランドンの血の跡が残るといいます。

この映画でヒラリー・スワンクは、性同一性障害を持つブランドン(体は女性でも、心は男性)を演じ、アカデミー賞、その他多くの賞を獲得しました。スワンク扮するブランドンは、完全にハンサムな美少年でした。この映画を見て以来、ほかの映画に出ている彼女を、素直に「女性」として見れないくらい、印象的でした。色々な意味で、あの難しい役を演じたヒラリー・スワンクは、素晴らしい女優だと思います。

舞台はアメリカネブラスカ州。アメリカで最も保守的といわれる地域なだけに、同性愛者に対する偏見や嫌悪が根強い(ほとんど「人間」ではなく「化け物」扱い)。
そんな中で、自らの気持ちに正直に

「自分がそうあるべき人生、そうなりたいと思った人生を生きた女性の物語です。」
(ヒラリー・スワンク)

レイプシーンは見ていられないくらいに痛々しく、同じ女性として悔しさや憤りを感じると共に、哀しくて涙が止まりませんでした。このシーンは、観る方も勿論辛いのですが、演じる方はもっと辛かったと思います。実際に、レイプ犯を演じた男性の一人はこのシーンを撮り終えた後、一人で隠れて泣いていたとか。この手の作品(「後味が悪い/二度と観たくない」系)としては、映画「ダンサー・イン・ザ・ダーク」が有名ですが、私的に「ボーイズ・ドント・クライ」は、今までに観た映画の中で一番悲しい映画でした。

でも、ブランドンの秘密を知った上で、彼女(彼)のすべてを受け入れ、男女の性差を超え純粋に「人間」として愛してくれた恋人ラナ(実在の人物だそうです)の存在と、そんな彼女を心から深く愛したことは、ブランドンにとって唯一の救いであり、それも監督によるひとつのメッセージでもあるのでしょう。

本当に衝撃的で暗く不快な映画ですが、扱っている問題は大きく(性的アイデンティティ、同性愛および同性愛者に対する偏見と嫌悪など)、一人の女性の死を通して、多くのことを考えさせられるという意味では、一度は観る価値のある映画かなと思います。

ちなみに、主題歌は、大好きなカーディガンズのニーナです。”The Bluest Eyes in Texas”は、この映画にピッタリで、見た後に、心に深く響く名曲だと思います。

関連記事

【英語学習おすすめ映画50選】歴代の英語視聴覚教材をまとめて紹介

【厳選】歴代の英語視聴覚教材50選 映画(海外ドラマ、アニメ、ドキュメンタリーなど含む)は、楽しく英語を学ぶことができる「視聴覚教材」だと…

【幸せの定義】心を通して見える「目には見えない本当の幸せ」とは

心の目で見る 外見や上部だけではなく、人や物事の本質を見抜くためには、 心の目で見ること、つまり、目ではなく、心で見ること(目には見…

20151/23

【魂の踊りフラメンコ】妖しい魔力と魅力”Duende”を持つ情熱の女たち

黒木メイサのドキュメンタリー番組 「スペイン フラメンコ 魂の踊りと出会う旅」がとても素敵でした。 彼女自身、ラテン(ブラジ…

20145/9

スペイン映画「ハモン・ハモン」の面白さ

「オズボーンの牛(Toro de Osborne)」をご存知ですか? スペイン出身の女優ペネロペ・クルスのデビュー作(スペイン映画)「ハモ…

情熱の画家 フリーダ・カーロの生涯

アルゼンチンの革命家チェ・ゲバラや大統領夫人エビータ、スペインの女王フアナなど、スペインやラテンアメリカの人物はマイナーに見えて、意外と注目…

【映画や海外ドラマを使った英語勉強法】3つの学び方と気をつけるべき9つのポイント

リスニングの力を伸ばすために、もう何年も続けていることがあります。大好きな映画や海外ドラマを英語音声のみで理解するためのトレーニングです。あ…

【英語学習の心得9選】映画「マダム・イン・ニューヨーク」に学ぶ真の国際人が持つ7つの資質

英語学習の心得として、個人的に大切にしていることがいくつかあります。 その上で、刺激になり、英語学習へのモチベーションにもなった大好きな映…

20161/9

【嫉妬の罪】「カルメン」 に見る破滅愛の代償

「カルメン」は、スペインが舞台の作品ですが、原作はフランスの作家プロスペル・メリメが1845年に発表したあまりにも有名な中編小説です。 …

フェルナンド・デ・ロハス「ラ・セレスティーナ」の悲喜劇

『カルメン』のカルメンといい、『女王フアナ』のフアナといい、『マルティナは海』のマルティナといい、映画や文学におけるスペイン女性の描かれ方は…

20203/25

【国民性ジョークに見る日米のイメージ】日本人の集団主義とアメリカ人の英雄主義

「国民性」に対するステレオタイプ 「日本人は〇〇だ」とか、「アメリカ人は●●だ」とか、「中国人は△△だ」などという具合に、単なるステレオタ…

19世紀イギリスの社会と女性〜ハーディ「ダーバヴィル家のテス」に見るヴィクトリア朝時代の光と影

原作は、ヴィクトリア朝時代(後期)の文豪であるトーマス・ハーディの名作「ダーバヴィル家のテス―純情な乙女」(Tess of the d'Ur…

20151/29

【海よりも深い愛】マルティナは海ーSon de Marー

大好きなスペインの映画「マルティナは海」(Son de Mar)を紹介します。 マルティナは海 [DVD] 舞台は、…

20141/24

映画「女王フアナ」に見る女の”狂愛”ーMadness of Love 【愛と嫉妬は紙一重】

スペインの映画「女王フアナ」(Juana la loca)を紹介します。 「狂女」と呼ばれた「女王」 「狂女とよばれてもいい。あ…

ゴヤの名画「裸のマハ」の謎ー実際のモデルは誰なのか?

スペインの映画 "Volavérunt"(邦題は「裸のマハ」)。内容や映像は、最初から最後まで暗く、ストーリーや人間関係などもドロドロの愛憎…

ページ上部へ戻る