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20151/29

【海よりも深い愛】マルティナは海ーSon de Marー

大好きなスペインの映画「マルティナは海」(Son de Mar)。


マルティナは海 [DVD]

舞台は、美しい地中海沿岸の小さな港町。

監督は、スペイン映画界では、言わずと知れた愛と官能の巨匠、(「裸のマハ」や「ハモンハモン」の)ビガス・ルナです。個人的には、アルモドバル監督の作品よりも彼の作品の方が好きです。やはりこちらも他の作品と同じく男女の愛を描いています。主演女優レオノール・ワトリングの恋人役は、「ハモンハモン」で嫉妬に狂うホセ・ルイスを演じたジョルディ・モリャです。あとでレビューを観るまで気が付きませんでした。「マルティナは海」では、全く異なる役柄だったので。

主な登場人物は三人の男女。
ヒロインとなるマルティナ(レオノール・ワトリング)と、美しい彼女に熱をあげる二人の男ウリセス(ジョルディ・モリャ)とシェラ(エドゥアルド・フェルナンデス)。
ウリセスは、小さな街の文学教師です。

この町の男たち、お金持ちのシエラですら与えてくれないものを持つ男。詩を語り、文学を読み、その心には海のような深い愛を秘めている。

一方、シェラは(ウリセスとは正反対で)街でも有名な富豪の男。美しいマルティナに目をつけ、顔をみるたび彼女を口説いていました(が、相手にされず…)。

「プールが二つある邸宅、ドレスに宝石、車にエステ…」
もしシェラと一緒になれば、何不自由ないリッチな生活ができる。

しかし、マルティナの心には、一貫してウリセスしかいないのです。

シェラ「望む物なら何でも与えてやるのに、なぜあの男を選ぶのか」
マルティナ「彼は物語(詩)を話せるわ」

よく映画でこういう(シエラのように、経済力があり、女という女はすべてお金で買えると思っている、愛情のかけらもない傲慢な男性が、なかなか自分に振り向かない女性に対して苛立って罵倒するような)シーンがありますが…。


一方、ウリセスは、優しく、海のように広く深い愛情を秘め、そして、文学(ギリシャ文学)を愛し、常に冷静沈着な大人の知性、そして、独特の感性をもっている。外的な魅力ではなく、そういう内面的な魅力のある人に惹かれるのは(好みはあれども)本能的なものだと個人的には思いますが。

(ウリセスが死んだと思い込んだ)マルティナは、シエラと暮らすことになり、しばらくは(少なくともシエラにとっては幸せで何事もなく)平穏な日々が続いていましたが、ある日、死んだと思っていたウリセスが、再びマルティナの前に現れてから状況が一変します。ここから、ビガス・ルナ監督らしいドロドロの愛憎劇が繰り広げられるのです。

「愛と嫉妬は紙一重」とはよくききますが、ビガス・ルナ監督は「愛と性欲は紙一重」だとも言います。本作品のテーマもここにあり、マルティナという一人の美しい女性をめぐって、ふたりの男性が、ひとりは“愛と嫉妬”に、そして、もうひとりは“愛と性欲”に狂い、キリスト教精神の反映とも言えそうなのですが、愛に付随する「八つの大罪(原罪)」のうちのほとんど「嫉妬」「強欲」「肉欲」「憤怒」「傲慢」「高慢」「怠惰」の罪を犯し、結局は自らの身を滅ぼしていく様(喜劇的要素もありますが、最終的にはやはり悲劇で終わる)が、ロマンチックかつ文学的に美しく描かれます。

洞窟の奥にひっそりと静かな水をたたえる湖で、ウリセスは何度もマルティナに優しく以下の詩の一節をささやきます。このシーンがとてもロマンチックで素敵でした。

「静かな海の底から2匹の蛇が昇ってくる。巨大なとぐろを巻いて。波の上へ。胸を出し、鎌首を高くもたげて浮上する。体の後部は水面下でくねらせている。1匹が私の周りで2度渦を巻いてから襲いかかる。そして二重に巻きつき体を固く締めつけた。私は何とかして結び目を解こうとするが…」

Del profundo mar en calma salen dos serpientes de imensas espirales por encima de las olas levantan su cresta y su pecho mientras el resto de su cuerpo se desarrolla a flor de agua una de ellas ahora me aprisiona en medio de dos vueltas y me oprime con el doble anillo de su amor y yo intento romper su nudo

詩の調べに酔うかのように、二人は愛し合う。

ラストの展開は、個人的にいまいちでしたが、映像も美しく全体的には面白かったです。スペインに行きたくなりました。

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